抄録:
本誌前号で筆者は「感性教育」をアクティヴ・ラーニングとして位置付け、大学の新入生を対象に試み、従来の大学教育では味わえない「主体的・対話的で深い学び」に相応しいものであることを報告した(小林、2019a)。学生たちの多くが「感性教育」でこれまでの大学教育では味わったことのない様々な気づきを体験していた。そこで、今回は同じく大学1年生を対象に半年間の「感性教育」を実施し、その体験談を自由に語ってもらった。その内容を分析すると、彼らは他者を観察し理解するという営みが、いかに自分の内面と深く関わっているかに気づくとともに、自己理解を深めることが他者理解に不可欠であることを体感していることがわかった。この結果より、「感性教育」が対人援助技術職の養成において、自己への新たな気づきを生むとともに、人間観察力を深めるための重要な方法であることが示唆された。