抄録:
本調査研究の目的は、特定の国ないしは地域において、会計教育がどのように展開し制度として確立してきたのかを知ることで、わが国の会計教育の特性について相対的に理解を深めることである。ここでは、イタリアの大学等における会計教育の内容と方法についての調査結果を明らかにする。会計教育について理解をするためには、イタリアの教育制度の現状について従前との比較をふまえながら知ること、大学教育が社会的にどのように受け入れられているかについて知ること、そして、会計教育が実施されている大学あるいは学部の組織構造と組織目標について知ることなど、前提として有すべき知識と情報が必要である。しかしながら、イタリアの教育一般および会計教育については、日本での先行研究も少なく、入手可能な資料も限られている。そのため、現地において、パイロット調査→本格的調査→フォローアップ調査のサイクルを繰り返して行うことが必要であった。また、資料収集の必要からも、複数回にわたって同一組織・同一人物からの調査協力を得ることとなった。調査のために訪問した機関(ならびに個人)は以下のとおりである。パルマ大学(アンドレア・チローニ教授)サクロ・クオーレ・カトリカ大学ピアツェンツァ校(マルコ・マリノーリ研究講師)パルマ大学(ジュゼッペ・ガラッシ教授)ボローニャ大学(ルカ・ザン教授)パルマ大学およびサクロ・クオーレ・カトリカ大学ピアツェンツァ校では、それぞれの大学・学部・コースにおける教育目標やカリキュラムについて調査を行った。さらに、サクロ・クオーレ・カトリカ大学ピアツェンツァ校では、実際の授業風景の見学をすることができた。また、パルマ大学においては、イタリアにおける会計専門職のための会計教育プログラムについても聞き取り調査を行った。ボローニャ大学では、いわゆる「ボローニャ方式」と呼ばれるイタリア独自の大学教育の伝統やその改革などについての調査を行った。なお、調査はのべで3度におよび、その内訳は、1回目:2013年11月27日~11月30日、2回目:2014年2月3日~2月4日、そして3回目:2015年6月13日~15日であった。