抄録:
証人審問権ないし対質権と伝聞法則との関係は我が国においても詳細な議論がなされてきた。また、アメリカにおいては、Crawford判決が修正6条の対質権と伝聞法則との関係を「切断」した結果として、修正6条が適用される供述と適用されない供述とをカテゴリカルに区分しようとする試みが続けられている。同じく伝聞法則を採用するイギリスにおいても、近年イギリス国内法の伝聞法則と欧州人権条約(以下「人権条約」という)6条3項(d)が保障する証人審問権との関係で、後述する欧州人権裁判所(以下「人権裁判所」という)とイギリスの国内裁判所との間で「対話」が生じた。本稿ではこの「対話」を概観することによって、伝聞法則と証人審問権との関係を検討するための研究の準備作業としたい。