抄録:
近年、日本におけるシティズンシップ教育に関しては、全国規模の研究会等が立ち上がり、多くのシティズンシップ教育関連の著作物が刊行されるなど、我が国の現状に合った理論研究や実践研究が進んでいる。特に実践研究では、小・中学校での社会科の時間や高等学校での公民科(特に「現代社会」「政治・経済」)での実践が多数報告されている。しかしながら、シティズンシップ教育実践の先行研究の多くは、中学校、高等学校での授業の教授書および単元の試案レベルでの概要を示したり構想レベルのカリキュラムが紹介されたりしている段階6)である。また、小学校でもいくつかの実践が紹介されてはいるが、十分な単元開発がなされているとは言えず、学習者の具体的な姿を通してシティズンシップ(市民性)がどのように育成されたか明確に示した研究は見当たらない。そこで、本研究では、これまでの研究動向を踏まえ、小学校6年生での単元開発(政治分野)を行い、その実践事例の分析・検討を通してシティズンシップの育ちを具体的な子どもの姿で明らかにすることを目的とする。なお、本研究では、日本における多様なシティズンシップ教育へのアプローチを踏まえ、シティズンシップを「社会的責任を自覚し、社会的事象を多面的にとらえながら、地域・社会に積極的に関わろうとする資質」と定義し、政治学習において単元開発した事例に対して実践分析を試みる。