抄録:
本稿の目的は、組織現象を理解する一つのアプローチであるメカニズム・アプローチを事例研究に適用することにある。具体的に、技術転換と企業の生存可能性に関する日本と米国におけるセメント産業の比較分析を通じて、日米間の違いを生み出すメカニズムを展開する。とりわけ、メカニズム・アプローチが重視している、マクロレベルの現象とミクロレベルの行為の相互関係性に着目し、その循環的なメカニズムを明らかすることでこのアプローチの有効性を示すことが、本稿おいて最も重要な点として位置づけられる。以下では、次の順序で議論を展開する。まず、メカニズム・アプローチがいかなる方法論であるかについて説明する。次に、技術転換と企業の生存可能性に関するこれまでの研究を整理した上でその限界を指摘し、限界を克服するための視点とメカニズム・アプローチを用いることの有効性について述べる。つづいて、この新たな視点を用いて日本と米国のセメント産業における技術転換後の企業の生存可能性の違いを生み出すメカニズム
を展開する。最後に、本稿の主張から導きだされる含意と今後の課題を提示する。