尾上, 修悟
(西南学院大学学術研究所Seinan Gakuin University Academic Research Institute, 2014-03)
先の稿で明らかにしたように,欧州理事会は,「安定・成長協定(SGP)」を様々なねらいの下に改訂した。その1つの大きなねらいが,従来不十分とみなされてきた,成長の重視と,景気の非対称的ショックの回避であった。そして,そうした目標を達成するための1つの条件として,それまでの財政規律に,構造的赤字の制限を加えたのである。構造的赤字の概念は,後に詳しく論じるように,もともと,購買力平価などの概念と同じく,あくまでも理論的に想定されたものであり, ...