抄録:
近年注目を集めつつある「過信」の経済モデルへの導入は,いまのところ民間の経済主体を対象としたものに限定されている観がある。この論文では,官僚または政府において,規制という政策決定に関する過信がある場合の意思決定の硬直性を説明できる枠組みを提示する。すなわち,経済環境の変化に対して規制や政策の変更が遅れ,政策によくみられる現状維持バイアス等の社会的費用の発生も説明できるものである。この点は,認知的不協和と類似の現象である。さらに,その結果として,政策が変更される際には,多くの社会的費用が付加的に加わるような状況が生じるであろう。