抄録:
数年前から自分の政策を学生に公開している。ゼミの時間には、この一週間で上手くいったことや失敗したこと、ついでに次の作品の構想など、私の制作にまつわる諸々を話すように心掛けている。さて、今回、本稿では、2008年9月の個展に出品した作品7点を掲載した。いずれも構想から完成までを学生に公開してきた作品である。解説文で書いたようなことは、おおよそ学生に話したつもりだが、いまひとつ記憶が定かではない。ともあれ、作品の解説を文字で残すことは、自分自身の資料としても重要なので書き留めておくことにした。書き留めながら思ったことがある。私が学生だった頃、先生の言葉はキラキラしていた。講評会での山本文彦先生の「絵には品というものが要るんだよ」だとか、学食での雑談中に聞いた河口龍夫先生の「ナンセンスって重要なんじゃないかな」だとか、上手く文字には起こせないけれど、数多くの先生に数多くの言葉を貰った。いずれも、若い私にとっては、後の制作の指標となるような金言だった。それに比べ、私の言葉はどうだろう。ちょうど、あの頃の先生方の年齢に近づいているにも関わらず、迷いやブレだらけだ。これは、とりもなおさず、作品制作に対する迷いやブレだ。実は30年近く絵を描いていながら”何を描くか””どう描くか”のいずれにも明確な答えを持ち合わせていないのだ。つまりは、日々移ろうおぼろげな答えを頼りに指導(?)に当たっているわけだ。前稿では、あたかも自信たっぷりに指導しているかのように書いてしまったが、しどろもどろなのが正直なところだ。私としては誠実に絵と向き合っていつるもりなのだが、やっぱり、学生には頼りなく映ってしまっているのだろうか・・・。 そう!だからこそ、そんな理由もあって、自分の制作を学生に公開しようと考えたのだと思う。洗いざらいを曝け出して、中途半端に迷ったり、中途半端にブレたりしているんじゃなくて、まじめに迷って、まじめにブレているんだということを、伝えたいのだ。