抄録:
慶長17(1612)年以来、江戸幕府は一連の禁教政策を出し、絵踏による信者の捜索や、宗門改めなどを厳しく行っていた。しかし、キリスト教が根絶することはなく、東北・北陸から西九州に至るまで、秘密裏に信仰を守ってきた人々がおり、特に九州には
潜伏キリシタンとも呼ばれる人々がいた。その一つの地域である久留米藩三原郡の今村は、福岡の潜伏キリシタンがいた地域として知られる。彼らは幕府の厳しいキリシタン禁制の下で、密かに200年以上の信仰を守っていた。ところが、幕末にキリシタン活
動が露見したことによって、久留米藩から取り調べを受けることになる。本論文は、今村の潜伏キリシタンが見つかった経緯と彼らの信仰、そして生活形態を『邪宗門一件口書帳』から寸見していく。