抄録:
固定資産評価審査委員会の委員を務め、その関係で出てきたいくつかの疑問について考えてみようと思い、論文を書くことにした。最初に出てきたのが、裁決主義である。すなわち、固定資産税に不服の者は固定資産の価格について固定資産評価審査委員会に対して不服の申立て(審査の申出)を行い、そして、不服申立てに対する決定の取消しの訴えを提起して争うことができるが、この方法でしか固定資産税を争うことができないのである(地方税法434条)。すなわち、固定資産税の賦課・課税処分に対して訴訟を提起することはできないのである。どうしてこのような規定が置かれているのか、他の法律の規定は地方税法と同じ趣旨で立法されたのかという疑問である。裁決主義全般の問題を取り扱った最近の研究もないようなので、本稿で整理したい、と考えたのである。
ところで、よく知られているように、2014(平成26)年に行政不服審査法が全面改正(施行、平成28年4月1日)されたが、それに伴った整備法で、不服申立前置主義について96法律の内、47法律が自由選択主義に変更された。検討された不服申立前置主義には、①いわゆる裁決主義、②選挙訴訟等の客観訴訟の前審である行政上の不服申立て、そして、③それらと異なる一般の不服申立前置主義、の3つが含まれていた。したがって、21あった裁決主義の規定もかなり廃止されている。
それでは、最初に裁決主義の定義や根拠さらには裁決主義を採用した規定を確認し、次に裁決主義の分類を行い、そして、不服申立前置主義の見直しの作業により廃止された規定と残された規定を確認し同時にそれぞれの理由を確認し、最後に、裁決主義の問題、とくに救済制度としての裁決主義の問題点を検討する。