抄録:
幼稚園や保育所等の保育現場(以下、総称として園とする)に出向き、幼児
体育の実践に携わって早45 年以上が過ぎた。その間、子どもを中心に据え、
それぞれの園ごとの保育全体との関係を大切にすることをモットーに、成長・
発達段階を考慮した系統的な体育遊びの指導法を通して、3 歳からの園児を直
接に継続的な保育指導するように心がけてきた。そこでは、園の先生方に対する園内研修をはじめ、先生方と協力して園行事を活用することにより、保護者対象の講演会等での乳幼児期からの健康・体力づくりの啓蒙、運動会や園外保育等を利用した3 歳未満児にもできる親子体操や遊び活動、高齢者との交流や障碍児との統合保育等でのレクリエーション活動、生涯学習を見据えたスポーツ・野外活動の普及・振興に努めている。この幼児体育の実践的研究のスタイルは、幼児体育・幼児健康学を専門としながら、独自の幼児体育指導法の確立を目指すことができ、幼小一貫カリキュラムの体系化を試みるための教育と研究に邁進する原動力となっている。そのお陰で、約40 年以上に亘り、保育者養成校において従事することができた。ここでは、保育学・乳幼児教育学に関する教鞭を通して、長年、蓄積してきた実証的研究の成果について、専門学校・短期大学・大学・専攻科・大学院の保育者志望学生や研究者の卵たちに伝えることができ、これまで保育・教育・
福祉現場に有能な保育者や研究者を輩出できたことに感謝している。本稿では、「幼児体育の実践から実証的研究への道」と題し、私の取り組んできた幼児体育に関する実践的及び実証的研究を振り返り、幼児体育における『理論の実践化・実践の理論化』の両立の方向性を探り、今日の幼児体育の実践指導における問題点を再確認すると同時に、幼児体育学の学際的・国際的・学術的な理論を再構築していくための実証的研究のあり方を明らかにすることにより、アジア及び日本幼児体育学会が目指す使命と今後の課題について総括
したい。