抄録:
この数年、私は自ら開発した「感性教育」の効果を検証してきた。そのなかで「感性教育」での最大の目的である自己理解を通した他者理解が深まるためには、少人数での対話が不可欠であることが明らかとなった。そこで今回は大学入学直後の学部新入生21 名(男女比:6 / 15)を対象に、対話を加味した「感性教育」を試みた。実施した回数は90 分7 コマ。最初に、ある教材を用いて「アクティヴ・ラーニング」とは何かを考えてもらった。その後、「感性教育」を実施して、各自自分の感想を発表し合い、他者の発言を聞くなかでどのような感想を抱いたかを自由に述べてもらった。時間の制約から対話の時間はさほどとることはできなかったが、学生は自分の感じたことを自由に述べ合い、相互に刺激を受けるという学びは、これまでほとんど体験したことはなく、全員が肯定的な評価を下した。その内容を検討すると、とりわけ印象的であったのは、彼ら自身の内面への新たな気づきが大きかったことである。以上より、「感性教育」は「アクティヴ・ラーニング」すなわち「主体的・対話的で深い学び」に相応しいものであることが確認された。