処分庁・行政主体の不服申立権と出訴権
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051.法学論集 The seinan law review
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第48巻3・4号 (2016)
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処分庁・行政主体の不服申立権と出訴権
小林, 博志
Other Titles:
Das Widersprufsrecht und die Klagbefugunis der Verwaltungsbehoerde・Verwaltungstraeger
Alternative:
Kobayashi, Hiroshi
URI:
http://repository.seinan-gu.ac.jp/handle/123456789/1260
Date:
2016-03
Abstract:
国民は違法な又は不当な行政活動とくに行政処分で権利利益を侵害された場合、救済手段として、不服申立て又は取消訴訟を提起して侵害された権利利益の回復を図ることができる。不服申立制度又は取消訴訟制度において、処分によって権利を侵害された国民は、不服申立人又は訴えの原告として、処分の違法性又は不当性を主張し、他方、処分を行った行政庁及び行政庁が所属する行政主体は、処分の適法性などを主張する。行政処分に関する一つの紛争を想定すると、原告が最後まで自己の正当性を主張する場合には、審査請求を行い、それが却下又棄却された場合に、再審査請求を行うか、又は取消訴訟などを提起して、裁判で争うことになり、しかも、三審制が保障されている我が国においては、訴えについては、一審で負けても控訴審さらに上告により最高裁で争うことも可能である。一方、被申立人である行政庁又は行政主体は、不服申立てにおいて処分が取り消された場合にはそれに従わなければならないし、また、再審査請求で処分が取消された場合にもそれに従わなければならない。従って、不服申立てにより処分が取消されたときに、行政庁及び行政主体は、最高裁判決によれば、それを不服として取消訴訟を提起することはできない。ただし、審査請求で敗北した審査請求人が取消訴訟を提起した場合には、訴えの被告として処分の適法性を主張し、この場合には、上告審まで争うことができる。不服申立人・原告と比較した場合、行政庁及び行政主体は、①審査請求で自己の主張が認められなかったとしても、再審査請求を提起することはできないし、また、②審査請求又は再審査請求で自己の主張が認められなかったとしても、取消訴訟を提起することはできないのである。こうした不服申立人・原告と被申立人・処分庁との違い、とくに処分庁に不服申立権や出訴権が認められないのはどのような理由に基づいているか、というのが本稿で究明すべき主要な問題である。ところで、不服申立制度を構築する際に、処分庁が市町村の機関や市町村である場合に裁決庁が県又は国の機関であるときがある。この場合、市町村の機関が行った処分について、住民から処分が違法であるとして不服申立てをされ、県又は国の機関が取り消す場合が考えられる。こうした制度は住民の権利救済にとってよいが、市町村にとってその処分がその自治権と適合するということで為された場合には問題となる。これはいわゆる裁定的関与の問題として議論されてきた。すなわち、この場合、処分庁である自治体の機関や自治体に対してその自治権を確保するなんらかの方策を認めるべきではないかが問題となる。さらに、最近では、沖縄県の普天間基地の移転問題に関する沖縄県と国の紛争の一つも、本稿で検討する問題に関わっている。すなわち、移転先の基地建設のため、国が辺野古地区の埋立を行う際に前沖縄県知事から公有水面の埋め立ての承認を得ていたが、これを現知事が取消したことについて、沖縄防衛施設局(国)が農林大臣に対して不服申立てを行い、農林大臣が不服申立てを認め、知事の承認取消の決定を取り消したが、沖縄県がこの裁決について取消訴訟を提起した。沖縄防衛施設局の不服申立ては認められるのか及び沖縄県が提起した取消訴訟は認められるのかが問題となる。裁定的関与においては、審査請求人としての国民と処分庁である自治体の利害が対立し、これに国又は都道府県という別の自治体が関与するという構図であったが、沖縄県と国との争いにおいては、審査請求人である国と処分庁である沖縄県の利害が対立し、この対立に国が裁決庁として関与するという構図である。こうした問題についても理論的な解明が行われていないので、本稿でその理論的な検討を行おうというのである。さらに、本稿は、以上の問題を考察することによって、不服申立制度というものの本質を検討することも射程においている。本稿では、戦前の判例や学説から検討を始める。というのは、戦後の学説も戦前のそれの影響を受けていると考えるからである。ただ、以下の整理及び検討を見て頂くと分かるように、先行研究もかなりあり、本稿の目的とするところは、先行研究の新たな整理という作業に限定される可能性が高いといえる。ところで、判例や学説の検討を始める前に、この問題に対する本稿の基本的な視点を確認しておく。国民・人民が提起した不服申立てに対して、裁決庁が処分庁の処分を取消した場合に、処分庁は再審査請求又は出訴することができるか、という問題に対して、α不服申立人の立場と利益、β処分庁の立場と利益、そしてγ不服申立の制度及びその趣旨の3つの視点が区別され、問題に対する解答はそれぞれの視点から異なると思うのである。例えば、処分庁はほぼ行政機関であることから、行政機関の権利又は権限がこの場合問題となる。しかし、裁定的関与が問題となる場合には、当該自治体の自治権が侵害されていることが問題とされる。これらの問題はβの点の問題である。これに対して、裁決によって自己の主張が認められた国民の側からすれば、この裁決に対して再審査請求又は訴訟を認めることは権利保護を妨げるあるいは遅らせる。これはαの点に関わる。最後に、裁決の拘束力又は確定力という問題さらには行政争訟制度というものを考えると、処分庁が出訴することが許されるのか、という問題が提起されることがあるが、これはγの問題である。判例及び学説において、これらの視点は意識される場合もあれば、意識されない場合もある。
Publisher:
西南学院大学学術研究所
Alternative:
Seinan Gakuin University Academic Research Institute
ISSN:
0286-3286
Journal Title:
西南学院大学法学論集
Volume:
48
Issue:
3・4
Start Page:
423
End Page:
480
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Name:
lr-n48v3_4-p423-4 ...
Size:
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Format:
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