抄録:
本稿の課題は,効率的市場仮説を検証した経済史研究を概観することにより,既往研究で利用されてきた計量分析の方法とその問題点を指摘し,同仮説の検証を意図した歴史研究へ適用可能な計量分析方法を提示する点にある。本稿の考察より,第1に歴史研究において効率的市場仮説の「正否」を二項対立的に問う必要はないこと,第2に仮説検定の枠組に囚われたことによって軽視されてきた市場効率性の程度を計測する必要があること,第3に市場効率性を計測する際に特定期間における市場の一定性を仮定することは歴史研究において妥当性が低いと言わざるを得ないことを明らかにした。そして,歴史研究として市場効率性を計測する際には,既往研究で利用されてきたMoving-Window法より非ベイズ時変自己回帰モデルが適していることを指摘した。