抄録:
本稿は,2000年から2013年の間にフランス学界において公表されたフランス中世財政史に関係する諸研究を筆者が収集し,12項目の間に振り分けて整理したものである。本稿は,最初は2001年に発表した拙稿(1)に倣って主要な業績を中心にその内容を分析しながら,研究史をたどることを目的としていた。しかし,参考文献表を一瞥しても分かるように業績数が500点を超える膨大な量に上ることが判明したため,急遽方針を変えて,まず可能な限り網羅的な参考文献表を作成し,2000年から2013年にかけての14年間について,フランス学界における中世財政史研究の蓄積と現状を公表することにした。文献目録作成に当たり,筆者の前回の調査で把握できなかった2000年以前の業績にも目を配っている。文献収集では,収集対象を中世財政制度のみに限定することなく,以下に分類した12項目が示すように,広く設定した。収集した業績のほとんどは入手したが,一部入手できていないものがある。文献収集に際しては,著書,献呈論文集,研究集会報告集はもちろんのこと,フランス学界における主要な学術雑誌,地方雑誌にも目を配った。しかし,地方雑誌に関しては,郷土史家による史料紹介あるいは簡単な分析を行ったページ数の短いものは学術的価値が低いと判断して排除し,何らかのかたちで研究者としての経歴をもつ著者,あるいは郷土史家として評価が高い人物による学術性を備えた論文を収集した。本稿のようなテーマで文献目録を作成する場合,人物史に関する研究も当然調査対象に入る。特に,都市及び領邦,王国において財政・徴税実務に関わる現場の役人や中央において財政・租税の管理・監督を行う官僚に関する人物史,あるいはそのような社会層のプロソポグラフィーについては,近年研究が進んでいるエリート研究(2)と相まってフランス学界は注目すべき蓄積を誇っている。こうした研究の動向は財政・-275-租税制度史研究において無視することはできないので,いずれ別稿で取り扱いたいと考えている。