Abstract:
わが国のキリスト教会では,一方ではミッション・スクールが確実にその社会的地位を向上させ,宗教教育の一端を担っているものの,青年や少年少女たちのキリスト者が減少している。そして,特に,少年少女たちにどのように福音を伝えたら良いか即効薬のような手だては見つからない。その原因の一つに,少年少女たちが直面している現状や彼らの信仰の特性への研究が余り進んでいないことが挙げられよう。私自身この分野の専門家でもないし,牧会経験上,中高生への対応は苦手である。かつて米国に 1 年間留学した経験があるが,米国においてキリスト教伝道に献身的に従事している女性に尋ねられたことがあった。「諸外国から多くの若者が米国に来ているが,日本人にどのように信仰を証ししたら良いか教えて欲しい。日本人は全く信仰に興味を持っておらず,どのようにアプローチしたらよいか,全く取り付く島がない。箸にも棒にもかからない」というのである。私は,「いやあ,私も牧師として,それを知りたいと思います」と答え,二人で絶句したのであった。大学院生と共に,英国バプテストのフェミニスト神学者アニー・フィリップスの『少女たちの信仰:子どもたちの霊性と大人への移行』(Anne Phillips,The Faith of Girls. Children’s Spirituality and Transition to Adulthood. Ashgate,2011)を読んだので,この分野の研究の最新情報を提供することで,日本の研究者や牧師たちの手助けのため,特に,第 2 章 変化の中にある少女たちを巡る「沈黙を破ること」を要約して,昨今のこの分野の研究史の概観を提供したい。