Abstract:
選択できる財の種類の増大は消費者にとって有利であり,社会的厚生を増大させるという考え方がある。その考え方がどこまで正しいのか,特に単独の財1単位を選択するケースを中心として検討し,経済心理学的考察を加えるのが本稿の目的である。もし選択肢の増大が,一つの商品を選ぶための心理的取引費用を増大させるという面を持つのであれば,社会的観点からすると,それらの新製品が消費されるようになったとしても必ずしも純粋に厚生が増大していることにはならない。この種の問題は,いわゆる製品差別化についての議論とサーチの議論とに関係するものとされてきた。しかし,本稿では選択する側の意思決定の面から,この問題にアプローチする。