抄録:
本稿では,医療制度改革に向けて様々な観点から考察を試みている。その特徴は,医療制度の基本的枠組みを3部構成(マクロ医療費決定体制,医療費拠出体制,医療供給体制)とした上で,各部分に必要な政策を具体的に説明している点である。まず,マクロ医療費決定体制における改革の基本方針は、「国民所得を基準にして,マクロ医療費を政治的に決める」というものである。それを実現するための具体策として,①公的医療費総額を国民所得の何%という形で固定化し,それを国会で審議・決定すること,②国民的合意事項となったマクロ医療費の上限を 守するために予算管理を徹底すること,などを挙げている。次に,医療費拠出における改革の基本方針は「経済力を基準にして,各人の医療費負担を決める」というものである。それを実現するための具体策として,①賦課ベースの統一,②事業主負担の50%固定化,③賦課単位の個人化,④定額保険料プランの創設,⑤低所得者支援制度の創設,などを挙げている。そして最後に,医療供給体制における改革の基本方針は,「情報を基準にして,医療の最適配分を図る」というものである。それを実現するための具体策として,①門番医制度の導入,②初期診療費の定額支払いによる長期契約の実現,③医療情報センターの設置,④リスク構造調整の実施,⑤高齢者特別診療プログラムの創設,などを挙げている。