Abstract:
この論文は、差別化された商品のモデルチェンジと販売促進活動の競争過程における経営者心理の変化が企業間の競争戦略を変化させていく過程を記述可能な動学モデルを提示し、いくつかの動学経路の態様を分類することを目的とする。モデルは単純な離散時間モデルであるが、生成される動学経路にはいくつものパターンがある。興味深い動学経路のパターンの代表的な例は、シュミレーションによる図解もなされる。競争戦略の変化は投下費用の変化を意味するので、原理的に景気変動の要因になりうる。すなわち、ここでのモデルは、経営者の心理的要因による景気変動の可能性を指摘するものである。日本銀行の短期経済観測調査を代表として、景気変動と経営者心理との関係は重要である。にもかかわらず、そのような経営者心理と景気変動との関係を分析する経営理論モデルは、ほとんど見当たらない。ここのモデルでは、いくつかの単純化の仮定をおくと、新たな差別化のための投資よりも販売促進活動のほうが、より大きく変動する構造になっている。また、経営者の需要予測の合計は、必ず過剰になることが自然であることも導かれる。