Abstract:
本研究は,1995年から2002年までの日本の製造業を対象にして,次の二点について検証を行っている。まず一番目は,成長機会の価値(The Value of Growth Opportunities)とR&D投資との関連性について実証を行なった。その結果両者には統計的に有意にプラスの関係があることが分かった。二番目は,成長機会の価値と変動性との関係を通して,オプション理論との整合性の検証を行った。企業の成長機会(投資機会)はよくオプションに例えられる。なぜなら,企業は状況によって投資を延期するかあるいは拡張するかなどの義務ではない権利を持っているからである。このように成長機会をオプションとして捉えた場合,成長機会の価値(オプションの価値)と変動性(ボラティリティ)には正の関係が予想される。本研究で行なった実証の結果でも,両者が統計的に有意に正の関係であることが確認された。これらの結果は, R&D投資は成長オプションを創出し,それは企業価値の増大につながるということを示唆している。