Abstract:
法起寺式伽藍配置(以下、法起寺式)は一般的に、一塔一金堂式で回廊内の東に塔、西に南面する金堂を配するものと定義される(図 1 )。法起寺式をとる古代寺院は日本全国の広範囲に分布していることが知られており、その初出は奈良県の法起寺であると
考えられている(菱田2005、石松2007、森2008など)。法起寺式をとる寺院のもつ性格については、先学によって塔と金堂を並置すること、塔の西に金堂が位置することなどから、西方浄土の阿弥陀如来を金堂に安置したとする説など様々な検討がなされてい
るが、法起寺式をとる寺院の本尊がわかっている例が少ないため特定の仏に対する信仰を見出すことが難しいことが指摘されている(菱田2005、森2008)。本稿では、古代寺院のとる伽藍配置はその寺院のもつ何らかの思想の表出であるという視点に立ち、南海道における法起寺式をとる古代寺院の様相を提示し、その分布から検討を試みたい。