抄録:
ヤングケアラーとは,「家族にケアを要する人がいるために,家事や家族の世話などを行っている18歳未満の子ども達(澁谷2018:1)」のことである。
高齢者介護や障がい者支援の分野では,以前から一定数の10代の子どもが高齢者の介護や障がいがある親の支援を担っていることは,いくつかの報告で分かっていた(例えば,中津ら2014;252-253,奥山2018;149-151)が,一般に知られることはなかった。しかし最近になってシンポジウムやマスコミ報道等が行われ,注目されるようになった。
筆者は2018(平成30)年度の厚生労働省子ども・子育て支援推進調査研究事業の一つであった「ヤングケアラーの実態に関する調査研究」に参加する機会を得た。その中で知ったヤングケアラーのケアの内容や子どもがケアの担い手となっている家族背景が,筆者が専門としているネグレクトとの共通点が高いと感じた。
そのため本研究では,現在までに明らかになっている日本のヤングケアラーの実態を紹介したうえで,ネグレクトなど子どもへの権利侵害との関係を検討したい。