抄録:
本稿は同テーマにてこれまでに報告した拙稿「社会福祉と『誠意』(Ⅰ)― かかわりの概念としての誠意の含意と諸相 ― 」1)および「社会福祉と『誠意』(Ⅱ) ― 社会福祉の価値規範の視点からのアプローチ ― 」2)に続く第3 報としての論考である。テーマとして「社会福祉と誠意」を取りあげた理由は次のとおりである(以下、第1報「はじめに」より再掲)。社会福祉実践は、直接的あるいは間接的に人(援助を行う人やその人たちの集まりである組織など)と人(援助を受ける人や家族など)とのかかわりのなかで展開される。そのかかわりにおいては援助の対象となる人たちの価値観やものの考え方、感じ方を理解することが大切である。人の価値観やものの考え方、感じ方は生まれ育った環境や長い歴史を通して培われてきた文化などが影響するものといえよう。日本人には日本人特有の価値観やものの考え方、感じ方があるものと思われる。その日本人特有の観念の一つとして「誠意」に着目するものである。誠意は古代より現代にわたり形成され、他者に対して、また、自己に対して標榜され、意識化された観念といえ、人と人とのかかわりのなかで展開される社会福祉実践においても作用し、機能するものと推測される。
以上のような問題意識を背景に第1報ではその端緒として誠意そのものに焦点化し、誠意とは何か、概念上からアプローチするものであった。続く第2報では、第1報で導きだされた誠意の概念を社会福祉の領域にあてはめ、社会福祉の価値規範の視点からアプローチするものであった。本稿ではこれまでに得られた知見を踏まえ、社会福祉のメゾレベルにある福祉経営の領域に視点をおきながら誠意の検討を試みるものである。社会福祉の経営組織における誠意とは何かについて模索し、理論的枠組みを提起してみたい。