Abstract:
この数年間、私は学部生、大学院生、社会人などを対象に感性教育を試みてきた。そのなかで感性教育での最大の目的である自己理解を通した他者理解が深まるためには、少人数での対話が不可欠であることが明らかとなった。
今回初めて、学部(3年)の「専門演習」で少人数を対象に、毎週1回1年半(計45コマ)の長期にわたる感性教育を実施する機会を得た。そこで学生たちがどのような体験をしたか、これまでの試みと比較検討した。その結果、人間の観察力がついたことを多くの学生が報告するとともに、それが日頃の対人関係にも影響を及ぼし、自らの人格の発達と成長を実感として語る学生が多くを占めた。なぜ感性教育が彼らの人格発達にまで影響を及ぼすほどの力を持つのか、自己理解と他者理解との関連から考察した。