Abstract:
経済学における意思決定は,所与の選択肢のから固定的選好にしたがって最適なものを選ぶという方式である.しかし,現実の意思決定では,売り手を含む他者からの働きかけや情報提供等の外的刺激に対する反応が重要な要素の1つになっている.だが,外的刺激への反応をともなう意思決定の一般的なモデル化には,複雑で困難な面が多々ある.それでも,外的刺激には個人が反応しない過小な水準のものもあれば,過大なために意思決定を回避させてしまうものもあることは確かである.その観点を導入すると,例えば消費を刺
激するための戦略にも製品差別化と同様の性質が存在するという結論が導かれる.さらに有意義な分析を行うためには,モデル化が困難な要素を具体化する必要がある.そこで,株式市場で投資家の投資戦略が互いに外的刺激になっていることと類似の状況が生じる,ギャンブル的ゲームにおける外的刺激の作用を対象として考察を進める.その議論では,外部からの刺激で個人の需要が変化する市場においては,均衡成立までのメカニズムの複雑性と多様性をモデル化するための新たな視点の必要性が明らかにされる.