Abstract:
言語教育センターでは、西南学院大学における英語教育の運営方法を具体的に示すため、2017 年12 月に「英語教育におけるクラス運営についてのガイドライン」を作成し、西南学院大学において英語を教える教員に配布した。このガイドラインはグローバル化する社会に対応する知識基盤の育成とコミュニケーション能力の向上のために作られたものだが、英語教育におけるクラス運営の様々な方法を示すための簡潔な配布物であったため、このガイドラインが具体的にはどのような目的とどのような理論的背景のもとに作られているのかについては、詳しく説明することができなかった。ここであらためて、このガイドブックがどのような必要性から生まれたものであるかについて明らかにしておくべきだろう。
そのため、ここでは「英語教育におけるクラス運営についてのガイドライン」のめざす目的とその理論的背景について説明しておきたい。このガイドラインは、実際には次の3つの目的を達成するための具体的なクラスの運営方法として作成された。
「英語教育におけるクラス運営についてのガイドライン」の3つの目的:
①英語教育の現場における民主主義的な関係の実現
②学生の批判的思考力(critical thinking)の育成
③行動主体(agency)としての学生の授業内での評価方法
これら3 つの目的は、今後、英語教育における多様な学生たちが、英語で、あるいは日本語と英語によって、活発に議論を行うことが必要とされるなか、学生が民主的関係を持ち、お互いに相手の議論を受け入れて多様な視点から物事を考える批判的思考力を伸ばし、そしてそれぞれが積極的な行動主体として授業に参加することを目指して設定された。今後、多様な文化的背景を持つ学生同士が具体的にコミュニケーションをとる機会がより多くなり、その結果、教室内においても様々なトピックを多様な観点から議論する機会が増大する状況の中では、これらの目的はより重要になってくるだろう。ここでは、ガイドラインのめざすこれら3 つの目的とその理論的背景は何か、そしてガイドラインの示した方法はどのような効果が期待できるかについて具体的に述べて、今後の英語教育をどのように進めてゆくべきかを考える手がかりとしたい。