Abstract:
『独唱団』と『ONE・一個』は、どちらも韓寒が編集長を務める文芸誌である。『独唱団』は「雑誌」であり、厳密に言うと「ムック」であるが、『ONE・一個』はスマートフォン雑誌アプリケーション(スマートフォンに限らず、パソコンや他の携帯端末などでも読むことができる)であり、現代的な色彩を持っている。2015 年7 月に発表された『中国インターネット発展状況統計報告』によると、2015 年6 月まで、中国のインターネット利用者数は6 億6 千8 百万人に達し、半年で新たに1894 万人増加した。インターネットの普及率は48.8% で、2014 年末に比べて0.9%増加した。そのうち、携帯電話でのインターネット利用者数は5 億9 千4 百万人に達し、2014 年12 月に比べて3679 万人増加したことが分かる。このような状況のなか、読者の読書傾向が伝統的定期刊行物から電子書籍に転向することが必然であると思われる。スマートフォン雑誌アプリ『ONE・一個』は、製品の設計にしても掲載作品の内容にしても、中国の若年世代の間で、大変良い評判を得ている。中国大陸の同様の製品の中で手本になり、韓寒のここ数年間の最も優秀な「作品」であると言えよう。『ONE・一個』が市場において広範な好評を博した情況の中、2010 年無期限出版停止となっていた『独唱団』のことを振りかえて考えてみると、八〇後作家の生存空間と八〇後文学の発展様式が前世代の伝統的作家、そして既成の文壇と比べ、すでに大きく変化したことが分かる。本文は『独唱団』と比較しながら『ONE・一個』の誕生と発展過程、そして掲載される文学作品などを考察し、『ONE・一個』が八〇後作家、読者そして八〇後文学にどのような影響を与え、どのような意義を持つのかを考える。