抄録:
2015年7月21日,韓国の朴大統領は,「公共」,「労働」,「金融」および「教育」などの4大部門における改革を2015年下半期の国政運営の核心的課題として宣言し,同年8月20日,国民向けの談話を発表した。この政府の方針を巡っては,当初から多くの批判や指摘が絶えず,今に至るまでに具体的な成果はみられていないといえる。とりわけ,労働部門改革に注目すれば,すでに,「通常賃金・勤労時間の短縮・定年延長」などの3大原案を巡り,いわゆる大統領直属の経済社会発展労使政委員会(経済社会発展労使政委員会法(法律第8852号)により設立された大統領所属の諮問委員会であり,1998年1月15日,第1期労使政委員会が開かれ,主に,労働政策とこれと関連する経済・社会政策などを協議することを目的とし,大統領に対する政策諮問
の役割をも遂行する)では,経済界と労働界の意見の隔たりがあまりにも大きく,政界でも野党からの強力な反発が続き,課題解決への展望は決して明るくない。朴大統領は,「労働市場,雇用市場の構造改善のために推進している定年延長と賃金ピーク制など賃金体系の改変をいち早く終えなければならず,労働改革は,つまり働く場の維持及び新しい仕事の創出,とりわけ青年の働く場の創出にとって要となるから…」とした。本稿では,戦後の韓国経済の成長に伴って変化してきた労働市場における環境変化を振り返りながら,とりわけ,現状における労働市場の最大の課題といえる若者の失業率問題に焦点を当て,その実態把握と,問題発生の背景にどのような要因があるのかについて分析することを目的とする。