抄録:
最近、市町村の境界に関する訴えなど市町村間の訴訟、さらに地方公共団体の不服申立権や出訴権について論文を書いているが、それらの論文を書く中で、地方公共団体が不服申立てや出訴する場合の手続はどのようになっているのか、という疑問が浮かんできた。いろいろ調べている中で、都道府県や市町村などの地方公共団体が不服申立てや訴えを行う場合には、地方自治法96条1項12号の規定による、当該地方公共団体の議会の議決を得るという手続を履践する必要があることが分かった。これは、訴訟などが地方公共団体にとって重要であることから、議会の議決を必要とするということであるようである。最近、沖縄の米軍普天間基地の辺野古移転計画
に関連して、国土交通大臣が行った執行停止の決定などについて沖縄県による国に対する出訴や函館市が国を被告として提起した原発に関わる訴え、など地方公共団体の出訴が話題となっている。この場合、もちろんこれらの訴訟においても議会の議決がなされている。しかし、訴えの提起に必要とされる議会の議決については、個々の判例についての検討や地方自治法のコンメンタールなどの検討を除いて、それほど検討されてこなかったように思われる。そこで、本稿では、この規定をその起源に遡って、その規定の意義や問題点などを、学説や判例を素材に検討するものである。また、そのことから、地方公共団体の出訴の範囲などを考察し、最近の議論にも応えたいと思うのである。