Abstract:
グローバル化に伴い、メンバーの性別や人種といった労働力の属性も変化している。この変化を受けて、従来の人事制度を見直す企業も現れている。国際人的資源管理(International Human Resource Management:以下、IHRM)では、本国人材(以下、PCN)、現地人材(以下、HCN)、第三国人材(以下、TCN)を対象にしている。また、PCN の中には日本の大学・大学院を卒業した外国籍人材も含まれるので、日本企業の本社では「内なる国際化」に向けた動きが加速する。つまり、職場単位におけるメンバー構成の多様化は、異なる文化(ビジネスマナーを含む)、言語、市場の情報などを理解するうえで、日本人人材のグローバル・マインドの形成において最適な場ともいえる。しかし、日本企業の主力は日本人男性である。そのため、ソーシャル・カテゴリー理論や類似性・アトラクション理論より多様性が組織にマイナスな影響をもたらす。女性や外国人が組織に加わると、男性vs女性、日本人vs外国人といったフォールトライン(=集団対立)が発生する。このような対立する背景には、日本企業が多様性に対する管理のノウハウがないことが原因である。ダイバーシティをパフォーマンスにつなげるためには、グループ対立を抑制する必要がある。このことは、日本企業が不得意とするIHRMの実施にも関係する。言い換えると、ダイバーシティ・マネジメントに対する積極的な姿勢こそが、IHRMの促進や、日本人人材のグローバル・マインドを形成にも貢献できると考えられる。本稿では、日本人人材と外国籍人材の「協働」をベースにグローバル・マインドの形成をダイバーシティ・マネジメントの視点から考察する。