抄録:
このたびは九州自閉症研究協議会佐賀大会の会長古賀将之先生(西九州大学)のお招きでこのような場を与えていただいたこと、とても嬉しく思います。心よりお礼申し上げます。私は25年間九州にいましたが、その後18年間九州を離れていまして、3年前に福岡に戻ったものですから、いまだにこちらでは浦島太郎の心境です。よって、日頃皆様方がどのような問題意識を持ちながら臨床実践に取り組んでおられるのかよく存じません。ここでは私が今どのようなことを考えているのか、今回の自閉症研究協議会のテーマ「自立」に焦点を当てながらお話しようと準備して参りました。はじめに簡単に自己紹介をします。1975(昭和50)年3月九州大学医学部を卒業して福岡大学医学部精神医学教室に入り、当時助教授であった村田豊久先生(後に西南学院大学教授)から児童精神医学を学びました。実はその前、医学部の学生時代ですが、20歳になってまもなく、当時、九州大学医学部附属病院精神神経科外来で、土曜日の午後から開催されていた自閉症療育ボランティア活動に関わるようになり、そこで自閉症の子どもたちと出会いました。このボランティア活動は「土曜学級」と呼ばれていました。私が自閉症の子どもたちと初めて直接触れ合ったのはこの時です。以来45年間、自閉症の子どもたちから大人まで多くの人たちと付き合ってきました。ただ残念ながら、今から20年余り前に九州を離れましたので、当時お会いしていた子どもたちとはお別れせざるをえませんでした。しかし、3年前にこちらに戻ってから何人かの方とは再会を果たすことができ、とても懐かしく思いました。今回お話する内容は、九州を離れてから私が行ってきた臨床活動から学んだものが中心となります。そのため、私の話を初めてお聞きになる方の中には、戸惑われる方も少なくないかも知れません。日頃皆様が発達障碍や自閉症についてお聞きになっている内容とは随分とかけ離れたものだと思うからです。