抄録:
本稿では、動詞句の基本構造と、そこから各種の構文がどのように派生するかを考察する。1節では、VPの基本構造として、主題階層をVP-shellに組み込んだ構造(cf. 加賀2001, 2007)に、Travis(2010)におけるようなAspPを想定するsplit VPの構造を組み合わせたものを仮定する。2節では、主題階層を構成する三つのマクロな主題役(Agent, Location, Locatum)をすべて有する構文の代表として、場所格交替構文と与格交替構文の構造を分析する。3節では、Agentを除く二つの主題役から成る構文の代表として、場所格倒置構文とThere構文の構造を議論する。