抄録:
1999年、わが国の会計基準および監査基準は、国際的に通用する会計基準および監査基準ではないと受け取れる「警句(legend;以下、レジェンドという。)」を付され、いわゆるレジェンド問題に直面した。「レジェンド」は、当時のアメリカの5大会計事務所(以下、ビッグ・ファイブという。)からの要請によりわが国の英文監査報告書に付されたものである。わが国監査基準はその起源まで遡ると、アメリカの監査基準を範として設定を行っている。それにもかかわらず、ビッグ・ファイブによりわが国の英文監査報告書にレジェンドが付されたのにはどういった理由があったのだろうか。本研究ノートでは、まずレジェンド問題の概要およびその背景を確認した上で、レジェンド問題の中でも、とりわけ監査基準のみに焦点を当て、わが国の監査基準はどのような点で国際的なものと認められなかったのか、ビッグ・ファイブはなぜわが国の英文監査報告書にレジェンドを付す判断を下したのか等その理由を明らかにしていく。そして、これらレジェンド問題に対してわが国はどのような対応を行ってきたのか、とりわけレジェンド問題前後の監査基準を比較することで、レジェンド問題がわが国に与えた影響を監査基準を通して検証していくこととする。