Abstract:
筆者の責任は、執筆依頼状にあったように「他大学の百年史の紹介や特に西南学院の百年史編纂に参考になるだろうと思われる点を紹介」することである。学外者であるため、どのようなことが百年史編纂の参考となるのかよく掴めなかったので、既刊の『西南学院史紀要』(以下『紀要』)を読むことにした。それによって百年史刊行プロジェクトについて多くのことを知ることができたが、とりわけ、第1巻(2006年)の「西南学院百年史編纂に関する検討-『西南学院七十年史』をもとにして」、「座談会『西南学院史紀要』発刊に向けて-抱負を語る-」から、より客観的な学院史記述が百年史編纂に必要とされていることがわかった。また、戦時下の西南学院について、掘り下げた歴史研究の必要も語られていた。このテーマ自体は『七十年史』ですでに触れられているが、そのようなものも「今の時点で新たに記述するのが良いのではないか」(『紀要』第1巻「西南学院百年史編纂に関する検討-『西南学院七十年史』をもとにして」、14頁)という言葉に励まされて、戦時下の学園の歴史記述について他大学はどのような資料を駆使し、どのような視点で記述しているのかを調べてみることにした。加えて、戦後昭和期のエポックである大学紛争の歴史の叙述も調べてみた。両者とも、厳しい時代状況におけるキリスト教学校の姿勢が鋭く問われた出来事だと考えたからである。