Abstract:
2009年に創立125周年を迎える関東学院は、1884(明治17)年にその出発点となる横浜バプテスト神学校の設立より始まる。その当時の日本は、自由民権運動の激化と分裂により、高田事件、群馬事件、秩父事件など数多くの政府転覆や政府高官暗殺計画が企てられ、政情不安定な時代であった。しかし、同時に日本銀行が設立され、工場払下げによる民間企業の勃興など近代化が急速に行われた時代でもあった。また当時は世にいう鹿鳴館時代であり、欧化主義の流行と相俟って、キリスト教も徐々に浸透していった時代であった。この時期に、神戸女学院、同志社、立教、活水、東洋英和女学院、青山、鎮西、桃山などのミッション・スクールが数多く設立されており、関東学院もこの時期、横浜山手に神学校としてスタートを切ったのである。本稿で取り上げる1984年刊行の『関東学院百年史』は、特に重要な課題と目的をもって記されたものである。それは自校の原点探しとその確定作業が課題であり、建学の理念の絶えざる継承を明確にすることが目的であったと思われる。