抄録:
本稿は,日本人英語学習者を対象とした多読(extensive reading)活動の効果について検証した結果を報告する。本研究では,135人の日本人大学生を対象に15週間の多読活動を実施した。多読の実施前後にエジンバラ多読プロジェクト(Edingbrough Project on Extensive Reading)作成の多読テストと空所補充テストを実施し,その伸長率を測定した。また,英語学習と多読に関する参加者の意識調査も行った。対応のあるt検定の結果,多読テストと空所補充テストのいずれにおいても,事前テストと事後テストの成績間には1%水準で有意な差が認められ,多読が英語の流暢な読みと総合的な英語運用能力を向上させることにおいて一定の効果をもたらす可能性が示された。意識調査の結果からは,参加者は,継続的な多読活動は容易ではないものの,英語学習上意義があり有用であると感じていることが明らかになった。