Abstract:
外国語学習者の多くが,学習方法に悩みを持ち,自分自身で解決することに困難を覚えている。学習にあたって適切な目標を立て,効果的な方法を用いて学習を継続し,学習効果を適切に評価するのは容易なことではない。このような外国語学習の問題を解決する方法の一つとして,学習ストラテジーの指導がある。本稿では,まず,日本人大学生が抱える英語学習方法の問題点を分析し,次に自律した学習者育成に向けた学習ストラテジー指導の必要性について述べる。そして,対象となる学習者のニーズを考慮し,Benson (2001)の自律学習理論と第二言語習得研究の成果を用いて作成した学習ストラテジー指導用の教材を紹介する。最後に,この教材を用いて行った8 週間の明示的な学習ストラテジー指導が,学習者の学習方法の知識の形成,ひいては自律的な学習者の育成にいかなる影響を及ぼすかについて調査したアクションリサーチの結果を報告する。調査の結果,学習者は,特に受容能力を伸ばす学習ストラテジーの知識が増えたと考えていることが明らかになった。さらに,Benson(2001)による自律した学習者の要素である「学習管理」,「認知プロセス」ならびに「学習内容」に関しては,前二者に肯定的な影響が認められた。また,明示的な学習ストラテジー指導は,外国語学習法に対する学習者の意識の喚起となることが明らかになった。