Abstract:
近年,音読指導が日本人英語学習者の読解能力の向上に効果があることが明らかになっている。しかし,その効果は学習者の熟達度の相違により異なっており,どの程度の熟達度の学習者までその効果が期待されるかを考慮して研究を進めることが必要であると予想される。そこで本研究は,熟達度の分布範囲が広い中級程度の大学生英語学習者を対象とした音読指導が,英語読解能力の向上に効果をもたらすという仮説を検証した。本論文では,初めに音読と読解能力との関係についての理論的背景と日本人英語学習者を対象とした先行研究を概観する。その上で,音読指導が読解能力向上に与える効果について,日本人大学生の英語学習者を対象に実施した約4 カ月にわたる実証的研究の成果を報告する。調査の結果,熟達度が中級程度の英語学習者に対しては,音読により読解力が向上するとは断言できないということが明らかになった。また,アンケートの記述より,調査参加者は音読に対して概ね肯定的であり,音読に肯定的な学習者の成績が向上していたことが明らかになった。