第11巻1号 (2015)
http://repository.seinan-gu.ac.jp/handle/123456789/1211
第11巻1号
2023-10-04T14:54:07Z
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百道緑道における子どものための植物学習
http://repository.seinan-gu.ac.jp/handle/123456789/1212
百道緑道における子どものための植物学習
山崎, 喜代子; 角田, あや; 澁谷, 康二朗; 塩野, 正明
かつては海水浴場であった百道海岸は、1982年に始まる福岡市の事業であるウォーターフロント開発として埋め立てられ、地行浜、百道浜、愛宕浜という新たな陸地となった。1989年にはこの埋め立て地においてアジア太平洋博覧会(通称ヨカトピア)が開催され、その後、福岡市図書館、福岡市博物館などの公共施設、西南学院中高等学校、集合住宅、個人住宅、さらに福岡ドームなどが設置された。これらの埋め立て地では電線類地中化が行われる一方、諸施設での緑化も進められ、比較的緑の多い地域となっている。緑化の一環として、博覧会会場設営に先立って、百道2号緑道(8,770㎡)が1987年に、百道1号緑道(9,907㎡)が1988年に設置された。百道1号緑道はヨカトピア通りから福岡タワー(1989年建設)までの自動車道を併設した南北に走る都市公園型道路である。百道2号緑道は1号緑道と交差して、百道浜公民館前から樋井川まで、東西に走る930mの長さの、軽車両以外の車の通行を禁止した道路である。2号緑道は土の路面を保持した約10m幅の緑道である。これらの緑道も含め、この地域は2012年に施行された福岡市都市景観条例に基づき、「シーサイドももち地区都市景観形成地区」に指定されている。また、緑道の管理は福岡市早良区役所維持管理課公園下水道係が担っている。一般街路樹はケヤキやメタセコイヤなど、限定された単一種によって構成されるが、百道2号緑道の両側には、18種の高木と15種の低木など多様な樹木が不揃いに配置されている。さらに、この緑道には図書館、博物館、あるいは集合住宅の垣根や植樹木が隣接することによって、実際には緑道の両外側の樹木を借景として樹木が重層化し緑豊かな空間にもなっている。公立小中学校の通学路として利用されているこの道路は子ども達にとって交通上安全な道路であるとともに、樹木を中心にした自然に接することができ、子どもの心身の発達、豊かな自然認識に有意な役割をもつものと評価される空間でもある。また、市民の散策道でもあり、通勤路としても利用されている。筆者らは、百道2号緑道の植物を利用して、2005年から2014年までの10年間、百道浜青少年育成協議会・百道浜公民館と提携して「百道浜の植物を調べてみよう」という夏休みの自然学習の教室を開き、また2011~2013年には百道2号緑道の樹木調査・表示板作成を行ってきた。本稿では10年間にわたる子どもの自然や植物への関心を高めるこれらの取り組みについて報告する。また、このような取り組みをするために、緑道の木本類、緑道とその周辺の草
本を調査し資料を作成したので、これらを記載する。
2015-08-01T00:00:00Z
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発達障碍の自立について考える
http://repository.seinan-gu.ac.jp/handle/123456789/1213
発達障碍の自立について考える
小林, 隆児
このたびは九州自閉症研究協議会佐賀大会の会長古賀将之先生(西九州大学)のお招きでこのような場を与えていただいたこと、とても嬉しく思います。心よりお礼申し上げます。私は25年間九州にいましたが、その後18年間九州を離れていまして、3年前に福岡に戻ったものですから、いまだにこちらでは浦島太郎の心境です。よって、日頃皆様方がどのような問題意識を持ちながら臨床実践に取り組んでおられるのかよく存じません。ここでは私が今どのようなことを考えているのか、今回の自閉症研究協議会のテーマ「自立」に焦点を当てながらお話しようと準備して参りました。はじめに簡単に自己紹介をします。1975(昭和50)年3月九州大学医学部を卒業して福岡大学医学部精神医学教室に入り、当時助教授であった村田豊久先生(後に西南学院大学教授)から児童精神医学を学びました。実はその前、医学部の学生時代ですが、20歳になってまもなく、当時、九州大学医学部附属病院精神神経科外来で、土曜日の午後から開催されていた自閉症療育ボランティア活動に関わるようになり、そこで自閉症の子どもたちと出会いました。このボランティア活動は「土曜学級」と呼ばれていました。私が自閉症の子どもたちと初めて直接触れ合ったのはこの時です。以来45年間、自閉症の子どもたちから大人まで多くの人たちと付き合ってきました。ただ残念ながら、今から20年余り前に九州を離れましたので、当時お会いしていた子どもたちとはお別れせざるをえませんでした。しかし、3年前にこちらに戻ってから何人かの方とは再会を果たすことができ、とても懐かしく思いました。今回お話する内容は、九州を離れてから私が行ってきた臨床活動から学んだものが中心となります。そのため、私の話を初めてお聞きになる方の中には、戸惑われる方も少なくないかも知れません。日頃皆様が発達障碍や自閉症についてお聞きになっている内容とは随分とかけ離れたものだと思うからです。
2015-08-01T00:00:00Z
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授業実践の様相-解釈的研究 -生活科「しぜんの生きものたんけん」の言語的トポス-
http://repository.seinan-gu.ac.jp/handle/123456789/1217
授業実践の様相-解釈的研究 -生活科「しぜんの生きものたんけん」の言語的トポス-
田代, 裕一
筆者が取り組んでいる授業実践の様相―解釈的研究とは、その授業での学習内容の展開とコミュニケーション過程との統一的表現、及びその解釈を目指すものである。これまで、この様相―解釈的研究を、主に社会科の分野での議論を中心にした授業を対象にして進めてきた。また、生活科を分析の事例に取り上げた場合もあったが、その際も比較的、社会的な領域を主にした実践であった。そこで、今回、生活科の中でも自然領域を主な対象とした授業を取り上げ、様相―解釈的な研究方法がどの程度、適用できるのか、その可能性を検討したいと考えた。さらに、以前は同一の授業者の授業を1回のみ取り上げることが多かったが、単元内での授業を複数回、みていくことで、学習内容の展開状況を関連的に把握することも試みてみたい。現在、様相―解釈的研究では、「発言表」というツールを用いているので、以下、「発言表」の作成の手順について簡単に述べておく。発言表は基本的に、発言者名欄及び、発言状況欄からなる。発言状況欄には、授業記録上の各発言の長さを、縦の実線として記入する。本稿では授業記録での発言記録の二行分(一行…今回は34字程度)を実線の一単位分にしている。このように発言の長さを、アナログ量的に表現する。さらに、授業において用いられた「主要な言葉」(授業の展開をとらえる上でキーワードとなる言葉として分析者が判断して選んだもの)を記号化して、その右横に載せている。これらの記号は、元の言葉がイメージできるように、類似性を重視して選んでいる。ただ、抽象的な言葉など、記号化がやや難しいものもあるが、このような言葉の記号化は、分析者の「センス」が問われるところであろう。なお、一回の発言の中で同じ「主要な言葉」が複数回用いられても、一回のみ、その言葉の記号を載せている。右側の発言内容の欄には、その授業での内容展開や言語的応答関係、その子どもの思考の特性、等を示す上で、重要と思われる言葉をそのまま抽出して記載している(一欄に最大14文字)。さらに、その右側に分節ごとに使用された「主要な言葉」を、アナログ的に集計して記載する欄を設けている。表はワープロもしくはパソコンで作成するが、今回は今後の教育現場での活用可能性や、また自然科学に近い内容でもあることを考慮し、(発言同士の関係といった、緻密な表現性の面ではやや課題があるが)パソコン(Excel)にて作成した。なお、今まで授業事例の分析を積み重ねてきた結果、現在、この様相―解釈的研究は、(ギリシャ哲学の用語を借りて言えば)授業のロゴス(論理=概念)とパトス(イメージ=情念)のトポス(場=様相)を表現することもケースによっては可能ではないか、と考えるに至った。そこで今回、「発言表」に基づいて、このような授業の言語的トポスをより端的に示す図表を新たに作成して、検討してみたい。また、かつて筆者は、「発言表」による授業分析は、言葉の森の中にいる、キーワードとしての昆虫を探すようなもので、ある意味、昆虫の発見・採集に似た「苦労・楽しさ」を持つ作業であると、ある学会の課題別分科会での発表の際、比喩的に述べたことがあった
が、今回は本当に色々な生きもの(を示す言葉)が授業記録のどこに存在するのか、探索することになった。
2015-08-01T00:00:00Z
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ハワイ島キラウェア火山イーストリフトゾーンにおける溶岩流表面風化と植生の回復過程
http://repository.seinan-gu.ac.jp/handle/123456789/1215
ハワイ島キラウェア火山イーストリフトゾーンにおける溶岩流表面風化と植生の回復過程
磯, 望; 黒木, 貴一; 宗, 建郎; 黒田, 圭介; 後藤, 健介
ハワイ島は、西北西~東南東方向に配列する延長2,400km に及ぶハワイ列島の島嶼群の南東端に位置し、面積10,451k㎡の火山島である(Macdonald, G. A., Abbott, A. T. and Peterson, F. L., 1983)。ハワイ列島はホットスポット上に形成された火山島群から成り、ホットスポットの上に位置する太平洋プレートの等速的な移動の結果、点々と火山が連らなる島列を形成したものと考えられている。Dalrymple, G. B. ほか(1973)は、太平洋プレートの移動速度と火山岩の年代との関係を検討した結果、太平洋プレートの西北西方向のほぼ直線的かつ等速的な移動を、マントル深部に位置するホットスポット仮説で説明できると考えた。現在はハワイ島周辺で溶岩流出が活発であり、この事実は、一般的には、ハワイ島下方のマントル深部に位置すると推定されるHawaiian Hot Spot の存在で説明されることが多い。Dalrymple らが現在のHawaiian Hot Spot の真上に形成されている火山としたハワイ島のキラウェア火山は、中心火口であるキラウェアカルデラと、その東方に延びるイーストリフトゾーン(East Rift Zone)で最近も度々噴火を繰
り返しており、溶岩流の噴出年代が特定されている数時期の溶岩流を噴出しているほか、現在も継続的に溶岩を流出する活動を継続中である。ここでは、溶岩流地帯の土地条件の変化過程の自然的特徴について解析する目的で、西南学院大学研究助成制度「湿潤熱帯地域における火山等自然災害後の土地条件変化に関する研究」の助成を受けて、2015年3月1日~6日に実施
したハワイ島イーストリフトゾーンの現地調査について報告し、特に溶岩流地帯に植生が侵入するプロセスについて、現地調査で明らかになった点を中心に報告する。なお、主たる調査地域は、ハワイ島東南部プナ(Puna)地区のパホア(Pahoa)からカイム(Kaimu)(Kalapana 付近)までの州道130号線、カイムからカポホ(Kapoho)までの137号線、カポホ(Kapoho)(Kumukahi 岬付近)からパホアまでの132号線の沿道を中心とした地域周辺である。
2015-08-01T00:00:00Z