橋本, 政子
(西南学院大学大学院Seinan Gakuin University Graduate School, 2015-01)
『ルーゴン=マッカール』叢書第12巻の『生きる歓び』は1884年に刊行されたが,最初の構想から3年間の中断の後,筋書きや舞台背景の変更が加えられ完成した。心理的,哲学的作品にするという意図は1880年の第一準備草稿からあった。しかしゾラの現実の生活において,母親の死,文学の師であったフロベールの死,友人デュランティー,ツルゲーネフやマネの死に遭遇し,心気症(hypochondria)やペシミスムの苦しみで中断されていたのである。この作品 ...